Dear Prudence

・中学1年か2年のときの英語の授業のことだけど、ALTの先生(重複表現)を相手にした会話練習で僕はビートルズが好きですと言ったら、先生は自分も好きだというので、どの曲が一番好きですかと(たぶんめちゃくちゃな文法だったろうが)尋ねたら彼は「Dear Prudence」と答えた。かなり予想外なその答えに、僕はちょっと面食らってしまった、というか正直なところ少しがっかりさえしてしまったのだが、今となってはたぶん彼は本当にビートルズが好きな人だったのだろう、と思う。

youtu.be

・「ホワイト・アルバム」の2曲目である。アレンジ、それから演奏の感じ、素晴らしいと思う。中学生のときにはわからなかったけど。というか、この"2018年ステレオミックス"はすごい。いろんな音がガンガン鮮明に聴こえて、おおお、Dear Prudenceってこんなに作り込まれてたのか、と興奮してしまう。

 

・蛇足。「THE BEATLES 1」でビートルズ入門を果たした僕が、近所の図書館の棚にたまたまあったからという理由でホワイト・アルバムを初めて聴いたのはたぶん小学5年か6年の頃なのだが、あまりにアダルトで醒めきったような世界観に、自分は「子供」が立ち入るべき領域を踏み越えようとしているのではないかとマジメな怖れを抱いたのを覚えている。

I Saw Her Standing There

・I Saw Her Standing Thereという曲を聴くたび、中学の文法書に出てくる例文みたいなタイトルが良いよなと思う。S+知覚動詞+O+現在分詞。

・それにしてもなんて完璧な曲なんだろうと、やはり聴くたびに思う。

youtu.be

・タイトルも良いが、歌い出しの"Well, she was just seventeen"という歌詞がまた、誰もが一発で聴き取れて歌える単純明快さで、本当に素晴らしい。

新宿西口地下の階段

新宿駅のいわゆる「ダンジョン」感を高めているのは、構内の複雑さに加えて、構内や周辺の道路のやたらいろいろなところに地下に降りる階段があることではないかと思う。まあ池袋や渋谷も階段は多いが、新宿はもっと多い気がする。

・これはその中でも僕の気に入っている階段で西口地下の「新宿の目」の前にやや唐突な感じで存在している。らせん状に左カーブしていて先を見通せないのが不安な感じなのと、この地下広場に共通の重厚なタイルのデザインもポイントが高いですね。この場所自体が地下1階に相当するので正確にいうと純粋な「地下に降りる階段」ではないのだけど。ちなみに、表示によると地下駐車場に通じているみたいだけど、ここまで書いておいて僕はまだ降りてみたことがないんだな、この階段。だって新宿に車で行く機会がないから……。

f:id:TomotaroOhtako:20230328154539j:image

小田急は取り壊し中。
f:id:TomotaroOhtako:20230328155039j:image

・これも同じタイル張りの階段だが、こんな感じであちこち工事の仮囲いがしてあったので見慣れた風景もいつまで見られるかわからない……と階段やら通路の写真ばかり撮っている僕は変な人。

f:id:TomotaroOhtako:20230328224114j:image

2022年、ZARDにはまる

・昨年から個人的な90年代J-POPブームで、今年もその傾向は続いているのだが、特に二十何年の時間を経て衝撃を受けたのがZARDだった。

・僕は平成初頭生まれの人間なのだけど*1ZARDの全盛期というのがいつだったのかよくわかっていなかった。というか、小学生の頃(90年中頃〜)にはアニメの主題歌に使われていたのを覚えているし、運動会では「負けないで」の替え歌を白組の応援歌として歌ったりした(こんなことをよく覚えてるもんだ)のでその頃がジャストで全盛期だったのだろうとフンワリ思っていたのだけど、もっと早く既に92、3年頃には大ブレイクしていて「負けないで」も93年のリリースだったということをWikipediaで調べて知った。そして、僕が思っていたのよりかなり長い期間にわたってヒットを出し続けていたのだということがわかった。

・90年代というのはミリオンセラーがポンポン出るJ-POPの黄金期だったけど、当時の僕は全くといっていいほど音楽に興味がなかった。まあ、小学生男子なんてみんなそんなもんだともいえるが。そして、不幸にして(僕が鈍感なだけだが)その後も長らく僕にとってZARDというのは「あの頃、テレビや街中で聴きまくった音楽」の域を出ることがなかったのが、十数年かかってようやく「ハッとした」(という表現がぴったりな気がする)のが去年のことだった。今になって驚くのは、当時は全く積極的な関心を持つことがなかったにもかかわらず、とにかく「ZARD、よく耳にした」という印象ははっきりしているということで、例えば「きっと忘れない」とかはもう十何年と少なくとも自覚的にはメロディーを思い出したことがないと思うのだが、YouTubeで再生してみると「ああ!このメロディー!」という感じで記憶が奥の方から蘇るようだった。

坂井泉水さんの書く歌詞には、「このままずっとそばにいたい」「君と歩き続けたい」(揺れる想い)のような、一見ちょっとびっくりするくらいにド王道っぽいフレーズも少なくないけど*2、それが歌に乗って耳に飛び込んでくる時に帯びる力が普通じゃない。坂井さんは膨大に書き溜めた言葉の中から歌にはまる言葉を選んでいたというのをいくつかのWeb記事で知ったけど、言葉を選ぶと言うのはこういうことかと思い知らされるというか、本当に衝撃的。

youtu.be

youtu.be

*1:別に濁す理由もないのだが、何となくインターネットだから

*2:同時に「こんな自分に合う人は もういないと半分あきらめてた」というようなすごく私的な感じの言葉も少なくない。

今年も終わりですが

・前回の更新からものすごく開いてしまったが、その間、思いついたことを書きはじめて、6割くらい書いたところでこんなものだったら無理に公開しないほうがマシなのではないかと思って下書きフォルダに引っ込めてしまったということが何回かあった。前回前半の感想を書いた「マチネの終わりに」も1ヶ月くらい前には読み終えたのだが。残念ながら今回もこれでおしまい。

【読書記録】平野啓一郎「マチネの終わりに」

・2週間ほど前から平野啓一郎の「マチネの終わりに」(文春文庫)をぱらりぱらりと読んでいる。単行本が出たのは2016年、つまり6年前のことで、僕の頭の中の「近いうちに読む」リストには少なくとも4、5年は入ったままだったのだがようやく読み始めた(僕の場合特に珍しいことではないのだけど)。

・作者が現在日本の中堅(注:年齢的な意味で)作家として公に高く評価されている(注:たぶん)……という予備知識の影響は否めないとしても、冒頭3ページに記された「序」の文章にはいきなりちょっと唸ってしまった。こういう簡潔にして出来事の全体を一度に示唆するような文章は誰にでも書けるものではないだろう。もっともこういう趣の「序文」の、その趣自体は一種の様式のようなものではあって、それを最初に発明したのはドストエフスキーなのか、トーマス・マンなのか、それとももっと以前の誰かなのか僕にはちょっとそのへんは教養がないのだけど。

・しかし、その後本編を読み進めるにつれ、あれ……これはもしかして割とフツーに娯楽的な(かつ舞台設定が随分大仰な)中年不倫恋愛小説なのでは?と思い始めた。「あれ……」というのは、僕は序文や「予備知識」から本書をそれこそ「魔の山」のような小説なのであろうと思い込んでいたのだ。だけどカバーの折り返しを見たら「本作は第2回渡辺淳一文学賞を受賞」と書いてあったので、やっぱり普通に中年不倫恋愛小説なのかもしれない。ともあれ、もうちょっと読んでみないとわからないでしょう。

最近聴いた曲

・この数日よく聴いた曲とかアルバムとか。

高原列車は行く(岡本敦郎

青い山脈藤山一郎

六甲おろし若山彰

母国情緒(東京事変

勝手にシンドバッド(サザン・オールスターズ) 

ニュームーンに恋してやくしまるえつこ

Cry Baby Cry(ビートルズ

Honey Pie(ビートルズ

 

魔法のメロディ (さよならポニーテール)

A Love Supreme(ジョン・コルトレーン

Live at BBCビートルズ

空気公団作品集(空気公団

ぼくらの空気公団空気公団

 

・インターネットの恩恵でこういうめちゃくちゃな聴き方ができるようになったのは楽しい。17歳の頃に欲しかったとも思う。

・「勝手にシンドバッド」は松屋の店内放送で流れていた。松屋の(おそらくは)全店舗で、しかも結構な期間流れるのだからそのプロモーション効果たるやもの凄いと思うのだが(実際僕もYou Tubeで何度か聴いてしまった)、季節モノとはいえ今さらオススメしなくとも日本中で聴かれまくってるような曲を流してどうするんだろう。その前はWhiteberryの「夏祭り」で、さらにその前はなんとSMAPの「世界に一つだけの花」だったから、まあそういうことなんだろう。

六甲おろしのイントロの、有無を言わさず聴き手のテンションを上げてしまうようなあのメロディは本当にすごいと思う。

藤山一郎さんや岡本敦郎さんの、現代のポップスでは絶対にあり得ない種類の伸びやかな歌声は定期的に聴きたくなる。